高齢化時代の経済振興(消費の主役で役に立て)

  高齢者のみならず、人は生産者としての機能と消費者としての機能を併せ持つ。どちらかと言えば高齢者は生産者としての機能は徐々に衰え、消費者としての機能が相対的に高まることとなる。そして政府は、将来の労働力不足と年金他社会保障費の増大に備え、高齢者に就労を促し、社会保険の自己負担を引き上げ、年金給付を抑制することで対応しようとする。時の政府でウェイト付けは違っても発想のパターンは変わらない。窮して来ると、ありもしない隠し財産を探し、それを食いつぶそうとする政策で有権者の賛同を得ようとする。

 

 このような将来に対し、健康不安、老後の生活不安を覚える高齢者は、貯蓄という防衛策に出る。結果として、高齢者の保有する資産はマーケットに流通することは無く、若者のビジネスチャンス、成長のチャンスのパイが細る。現在のような高齢化社会対応は「オレオレ詐欺」の見込み客が増えていくだけなのだ。

 

 さてどうするか。大胆で極端な発想に映るだろうが、本質的な掘り下げを行って組み立ててみると全く現政策と異なった絵が見えて来る。

 まず高齢者が就労すること大いに結構、元気で働き続けることは素晴らしい。しかしながら、そのようにできない高齢者、違う生き方をしたい高齢者も多数であり、ますます増えるのが自然だ。そのような高齢者は役に立たない、最低限の生活水準で生命維持が出来れば良いというものではない。

 

 高齢者が世の中で最も役に立つ場面は消費者としての機能である。高齢者社会で高齢者の消費力が減退すれば、まず小売業は成り立たなくなり、ひいては全産業が縮む。経済とはお金の流通、それも特定の限られた階級での流通ではなく、多くの人が参加するお金の流通量にかかっている。年金給付の抑制はその本質にとってブレーキとなる。

 

 私は、高齢者には最低年金500万円を提案する。突拍子もない発想だが、高齢者がこの金額を趣味に、旅に、家族の為に消費する前提があれば、若い皆さんは知恵を絞って新しいビジネスを開発する。

  当然ながら、そのような給付措置はは貯蓄にまわるだけという意見も出るだろう。

  もちろん同時進行的に、マイナンバー制度と諸システムの連携させて個人の消費をすべて把握できる体制は必要だ。それが伴えば、1年で使い切れない給付分は返納させ、また1年分として500万円を給付する。同時に不健全な消費を監視することもできる。そして、毎年充分に生活可能な水準での給付があるということになれば、保有する個人資産の課税や相続税の増税も抵抗感が薄れて可能となるであろうし、若者の社会保険料納付のモチベーションにもつながるであろうことが大きい。健康問題による就労生産機能の低下、将来の生活不安という、高齢者の持つ本質的不安を理解し、高齢者を世の中で役に立つ主役と位置づけなければ、高齢化時代の経済は健全化しない。

 

2016.9